第5回 さっぽろ腎臓病市民講座
2025年5月10日(土)
札幌市中央区民センター
腎臓の働きと慢性腎臓病
NTT東日本札幌病院 腎臓内科部長 眞岡知央先生
司会より着席してのご講演をどうぞとのお声がけに対しても、立ったままの方が本日来ていただいた皆様のお顔がよく見えるからと、
立ちっぱなしの熱意あるご講演でした。
1. 腎臓について
2. 慢性腎臓病について
3.
腎代替療法の解説
A. 腎臓移植
B. 血液透析
C 腹膜透析
を中心にお話しいただきました。
以下にお話ししていただいた内容をまとめます。
1. 腎臓について
位置と形、構造と腎臓の働き特に尿の生成、ホルモン分泌代謝についてご説明いただきました。腎臓の機能は糸球体濾過量で表され、腎臓が1分間でどれだけの血液を綺麗にできるかを示したものです。血清クレアチニンで糸球体濾過量を計算してeGFRと表します。eGFRは加齢とともに低下します。
2. 慢性腎臓病 Chronic Kidney Disease CKD
慢性腎臓病はeGFRの低下によって進行度がステージ分けされています。eGFRが90以上をG1、89から60がG2、59から45がG3a、44から30がG3b、29から15をG4そして15未満をG5ステージとしています。CKDの進行の原因は腎臓そのものの病気や全身の糖尿病や高血圧です。これらは同じようにステージが進行していき、後戻り(回復)することは稀です。したがってCKDの治療の目的は、この進行を可能な限り遅らせることです。どのようなケースにも共通して行われる治療と、個別の原因に合わせて行われる治療があります。共通する治療は食事療法、生活改善、薬物療法で、最近ではSGLT2阻害薬の腎保護効果が確認されています。CKDの進行は人間の歯に似ています。一旦抜ければ生えてこないですし、もともと丈夫な人がいればそうでない人もいて、加齢に伴い悪くなりますが、ケア次第で悪化が防げますよね。
4. 腎代替療法の解説
残念ながら腎臓の機能が低下してしまうと自分の腎臓の代わりに腎移植、血液透析、腹膜透析という方法で腎の代替を行う必要があります。
A. 腎臓移植は腎臓が機能しなくなった患者に他人の腎臓を移植する治療法で、脳死あるいは心臓死したドナーから摘出した腎臓を移植する献腎移植と、親、子、兄弟などの血縁者、または配偶者から腎臓の提供を受けて移植する生体腎移植があります。:生体腎移植においては血液型ABO式がマッチしていることが理想的ですが、現在では、免疫抑制剤および抗体除去技術の進歩により、ABO式不適合であっても腎移植が可能となっています。透析療法に比べてQOL,社会復帰率、生命予後は血液透析に比べて良好です。年間1600名程度が受けられています。
B. 血液透析は体外で透析膜(ダイアライザー)を介して血液中の老廃物を除去する方法で、シャント手術が必要(透析をしやすくするための血管をつなぐ小手術)で週3回通院し、1回3~6時間の透析を受ける必要があります。現在30万人以上が受けられています。
C. 腹膜透析はContinuous Ambulatory Peritoneal Dialysis 連続携行式腹膜透析、略してCAPDと呼ばれます。腹腔内に留置したカテーテルを通じ、透析液の注液→貯留→排液を繰り返して老廃物の除去と補給を行います。血液透析に比べて体液の恒常性が保たれやすく、在宅な医療なので自由度の高い生活が可能です。ただし、腹膜には5から8年の寿命があって、いつかは透析や移植が必要になります。また毎日バッグ交換を行う煩わしさが伴います。
最後にまとめとして
腎臓は尿をつくり、体液の恒常性を維持するための臓器です。慢性腎臓病は、腎臓の機能が低下している、あるいは尿蛋白が出ている状態で、加齢に伴い誰でもなりうる可能性がある病気です。腎代替療法は末期腎不全に至ってしまったときにとる選択肢で、血液透析以外にも腹膜透析や移植があります。
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